組織で定期的なふりかえりを約半年間行ったので、実施のプロセスと成果をご紹介します。
この記事を読んでほしい方
この記事は以下のような方々にぜひ読んでいただいて、ふりかえりによる効果を知ってほしいと思います。
- 組織やチームでの成長と改善に興味がある
- 業務の効率化やチームビルディングを図りたい
- 組織内のコミュニケーションを活性化させたい
- チームメンバーのエンゲージメントを高めたい
きっかけ
私が所属しているEC部 技術1課ではAWSへの移行や構築支援などのプロジェクトを手がけています。
ふりかえりを行ったきっかけは期初に開催された課内方針のミーティングでした。
そのミーティングでは前期の活動を振り返り、部署や個人のミッションに基づいて成し遂げたこと、そうでなかったことを共有しました。
またどんな組織になりたいか、組織課題の改善案や個人のミッションを互いにどうサポートし合えるかなど非常に有意義なディスカッションをしました。
そんな中、私は以前から感じていた問題を提起しました。
それは案件やメンバー間で発生した問題が他の案件やメンバーと十分共有されていないかもしれない、という点です。
このような情報共有のギャップを埋めることは、私たちの組織での成長や改善にとって重要だと感じていました。
そこで、頻繁にふりかえりを行ってカイゼンのサイクルを速めたいという思いを込めて「課の定期的なふりかえり」の開催を提案しました。
その場のIdeaはメンバーにすぐに受け入れてもらえ、定期的なふりかえりを実施することになりました。
準備
ふりかえり実施に至るまでの準備内容です。
メンバー全員が参加できる時間の確保
当たり前ですが、課の全員が集うことになるためできる限り仕事に影響が出ないように考慮しました。
頻度については週1回ではスパンが短すぎてコメントが活発にはならなさそう。でも月1回だと起こったことを思い出すのに時間がかかりそう。ということで2週間に1回のペースで開催することに。
開催枠についてはこれまでの仕事のリズムを崩したくはないと思い、毎週の課会の枠を利用することにしました。
結果、毎週の課会枠を隔週で30分減らし、2週間に1回1時間枠で開催することにしました。
ふりかえりのフォーマット
世の中には素晴らしいふりかえりのフォーマットがいくつもあります。
その中でもシンプルで始めやすい Quick Retrospective(Good / Bad / Ideas / Actionsのふりかえり)
をベースにしました。
- テンプレート
CacooやMiroなどボード共有できる各種ツールには様々なふりかえり(Retrospective)のテンプレートが提供されています。
Examples | Cacoo - Online Flowchart & Diagramming Tool
50+ Free Retrospective Templates & Examples | Miro
私の場合はCacooでボードを自作して利用していましたが、途中でConfluenceのホワイトボードに切り替えました。
理由は後述します。
ルール
実際にふりかえりのボードに記載したルールはこちら。 工夫したポイントは以下です。
- 人数
課の人数は大体固定のためルールには明記していないですが、
1時間枠でQuick Retrospectiveをやる場合は4-6人の規模がいいようです。
This template includes detailed facilitation tips to run a collaborative 1h Team Retrospective session, most suited for teams with 4 to 6 members.
Quick Retrospectiveでふりかえりを実施される方は組織の規模によってチームを分けて人数を調整してください。
目的
サーバーワークスではWhy(なぜそれをやるのか)を大事にしています。
ここは一番ブレてはいけない大切な部分であり、必須項目です。 ふりかえり活動自体の成果の指標にもなります。記入
付箋に名前を書くのは単純に時間の無駄です。読み上げの際にピックアップした時点で発言をする仕組みになっているので誰が書いたかは気にしませんし、なんとなく誰が書いたか予想したりしてちょっとだけワクワクします。
記入時間の5分は最初のうちは短いと思うかもしれませんが、実際にやってみると脳が活性化して結構良いです。
また、個人的に心がけていることとしては些細なことでもいいからとにかくたくさん付箋を書いてメンバーが付箋を書くのを促すようにしています。読み上げ
ここは一番盛りあげたいパートです。 みんなでワイワイガヤガヤ発言し合って、Goodには賞賛を、BadにはIdeaを積極的に発言しあいましょう。
やってみるとわかりますが、盛り上がるかどうかはファシリテーション力に左右される部分が結構あります。(私はあまり上手く場を回せないので今後もっとトークスキルを磨かねば。
逆に話すのが苦手な方はファシリテーションの練習にもなっていいかもしれません。Action
まずはお試しということもあり、時間の都合も相まってあえてこのパートはオプションにしました。
無理に行動することを前提にルールを課してしまうと、それ自体が目的となってしまって柔軟なIdeaが出ずに問題解決の本質が失われる可能性もあると思っています。
あくまでカイゼンを実行するのはメンバーの裁量に委ねることにしました。
後述するアンケートの結果でも分かりますが、割とActionへ繋がっていました。
よって、初めのうちはActionのパートは強制せずにオプションとし、 メンバーがふりかえりに慣れて軌道にのってきたらIdeaからActionへ移す方法を考えていくのが良いと思います。実際のボード内容
イメージしやすいようにCacooで行っていた時のふりかえりボードを貼っときます。
ふりかえりをふりかえる
取り組みを続けて半年経ったところで、ふりかえり活動の成果を測るべくメンバーにアンケートを取りました。 その結果と私の感じたことをまとめました。
アンケート結果
※具体的な内容の部分は一部を抜粋しています。
1=Good、5=Bad- 主にどのようなことを改善できましたか
「自分や皆さんが行っている業務改善・自己成長・成功体験を共有することで、皆さんの行動がより近くなり、成果を周知できるようになった」
「アウトプットするほどでもないと思っていたプチ成果も共有される」
「他の課メンバーの状況を知ることができた。今まで知ることができなかったので。」
「周りの人の手助けができるか考えることができるようになった」
この回答の中で特にめちゃめちゃ嬉しかったのは、
「案件の活動の中でほかの方が経験した内容を、タスクフォースの改善点としてインプットするきっかけになった。」
でした。
今回の取り組みを行ったことでメンバーやプロジェクトの垣根を越えてカイゼンが実施されたのは一番の成果だと思っています。
私個人としては、カイゼンのサイクルが早く回っていることと、
プロジェクトであまり関わりのないメンバーがどんなことで悩んでいるのかを知ることができて一人で悩むことが減ったと感じています。
- ふりかえりのルールでGoodな部分があれば教えてください
「ファシリテーターを毎回別の人がやる点」
これは偶然の産物でした。当初ファシリテーターはずっと私が担当するつもりでしたが、
途中で2チームに分けたことによって強制的に私がいないチームには誰かにファシリテートしてもらう必要がありました。
その場のIdeaでチームごとに挙手制にしたのが良い結果になりました。
「プライベートなことも振り返っていいことで、記載するハードルが下がって良いと思いました。」
「1時間で行う時間割はちょうどよかった」
付箋を書く5分ルールとも重なりますが、一見短いと思える時間枠の中でいかに頭をフル回転させて、ふりかえり、Ideaを出すかがキモだと思っています。
限られた時間の中で自由な発想でディスカッションするブレインストーミングの感覚に近いものかもしれません。
- ふりかえりのルールでBadな部分があれば教えてください
「Cacooの操作感が少し重い気がする。」
当初お試しでサクッとCacooで作った1つのボードをメンバー共通で使い続けていました。
毎回同じボードへ枠を追加していったからなのか同時アクセスのメンバーが多いからなのか、原因は定かではないですが一部のメンバーは操作しづらかったみたいです、、ゴメンなさい。。
ちなみにCacoo自体は全然悪くなくてちゃんと公式にもEasy Retroとして同じフォーマットのテンプレートがあります。
nulab.com
Cacooを利用する際はふりかえり開催ごとに新しいボードを作ってチームごとにボードを分けると端末への負荷が低くなるかもです。(未検証
私の課ではひとまずツールをConfluenceのホワイトボードへ変えたことで一旦解消しています。
「マンネリを感じたので月1回くらいペースでも良いかもとは思った」
隔週だとプロジェクトの進み方やメンバーの分け方によっては前回と同じような内容になってしまって、新鮮味がない内容になっちゃいます。
ここは開催ペースとチーム分けのメンバーを柔軟に変えるのが良さそうです。
ふりかえりのカイゼン
ふりかえりの中でふりかえり自体のルールもいくつかカイゼンしました。
チームを分けた
先述のとおりですが、8名体制で1時間枠はどう考えてもメンバー全員が書いた付箋を消化できませんでした。タイマー
当初はパートごとにファシリテーターが目視で時間確認して進行するスタイルでした。 これが結構手間となっていてテンポや場の雰囲気に影響を与えていたので、ツールにタイマーが備わっているものを選択することで解消しました。
Confluenceのホワイトボードや、Miroのボードにはタイマーが備わっています。
総評
控えめに言って、この取り組みを実行して良かったと思っています。 成果はアンケート結果の通りでしたし、少なくとも私はこの取り組みによって課内が活性化されたと感じています。
月2回開催の1時間枠で課のメンバーが8名とすると、月に約17.36時間。この投資に対して得た成果としては十分ではないでしょうか。
また、個人的の取り組みとしては組織を巻き込んで実施するようなスタイルは初めてだったため、 今後の活動にも自信がつきました。
ふりかえりの今後
ふりかえり継続
まずはお試しで始めた取り組みだったので期が変わっても開催を続けるかという意思決定をしました。 これについてもアンケート内で多数決をとり、開催継続OKの回答を満場一致でもらえました。カイゼンサイクルを回す
「いいすねー」で終わってしまってActionに移せない付箋やIdeaがたくさんある状態で終えることが多々ありました。
アンケート結果でも皆さんからご意見をいただいており、これらをいかにActionに持っていくかが次のステップだと思っています。
ルール自体のカイゼンで解決方法を検討中です。
あとは個人的には付箋記入中にBGMを流したい。今は無音で黙々と記入していますが、音楽が流れてる方がテンポ良く書ける気がしています。
Miroではタイマー機能に音楽をかける機能も備わっているので、移行するか検討中です。
Built in music player: play music directly from the timer
小ネタ
- おじさんは文章が長い
世代というやつでしょうか。私含めて比較的おじさんのエンジニアは付箋パンパンに文章を記載してしまう感覚を持ちました(完全偏見
まとめ
この記事を読んでくださった方が組織やチームにおけるふりかえりを行うきっかけになれば幸いです。
たとえふりかえりのスタイルではなくても、このような文化が組織に広まっていけばいいなと思っています。