「アイデアを生み、育む」サバラボ制度で切り拓く、社員主導のビジネスチャレンジ

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IE課(インターナルエデュケーション課) に所属しております山﨑です。

サーバーワークスには、サバラボ制度というものがあります。これは一言でいうとサーバーワークス社員の皆さんが新しいビジネス(事業/サービス/プロダクト)にチャレンジすることを応援する仕組み(インキュベーション/孵化)です。今回はサバラボ制度の発起人である私が、本制度についてご紹介したいと思います。

サバラボ制度の概要

本制度の目的

サバラボ制度の目的

4つのプロセス

サバラボ制度は大きく4つのプロセスに分解することができ、それぞれ「サバラボ1st」「サバラボ2nd」「事業化判断」「事業化」の4つです。

「サバラボ1st」「サバラボ2nd」ではそれぞれ責任者を配置し、一種のプロジェクトとして改善/運営活動をしています。

「サバラボ1st」ではアイデア立案を主軸として取り組み、サバラボ2ndでは、feasibility study / PoC / 最終プレゼンを経て最終的に事業化に向けた意思決定を行います。

私は「サバラボ1st」の責任者として制度を推進しているため、本ブログではサバラボ1stをメインにご紹介していきます。

サバラボ制度の4ステップ

新規事業推進におけるサバラボ1st/2ndの位置付け

企業として新規事業を推進するための手段は多岐に渡り、トップダウン型/ボトムアップ型の2つに大別されます。

サバラボ1stおよびサバラボ2ndはボトムアップ型の手段という位置付けです。

サバラボ制度を介さずとも最終意思決定権を持つ経営陣へ直談判するといった手段が考えられますが、組織規模が大きくなればなるほどハードルは上がります。このようなボトムアップ型の課題を解決する仕組みとしてもサバラボ制度は機能しています。

サバラボ1st

概要

サバラボ1stとはサバラボ制度)においてアイデアを生み出す1stステップに位置する取り組みです。

サバラボ1stでは、社員が自らビジネスアイデアを企画、提案する、ビジネスアイデアコンテストを年2回の頻度で開催しています。

以下は上期に実施するサバラボ1stの全体スケジュールです。

サバラボ1stの特徴

月間20時間の固定時間確保

サバラボ1stはこれまで4回実施していますが、社員の多くから以下の声が挙がっていました。

サバラボ1stに参加したくても業務が逼迫していて時間が取れません。。。

また、アイデア企画という特性上、業務の合間を縫って細切れの時間を捻出するよりも、まとまった時間を確保してディスカッションおよび企画を進める方式を採用した方が良いとサバラボ1st運営委員は考えました。

そこで、サバラボ1stの活動に対して月間20時間の固定時間を確保するという制度設計を採用しています。お客様対応は例外ですが、原則として毎週固定曜日の午後の時間(5時間)はサバラボ1stの活動のためだけに使い、それ以外の社内業務は控えていただきます。

もちろん固定時間を確保するということは、それだけの人件費を投資するということなので無条件で確保する訳にはいきません。

そのため一次審査を設けて、一次審査を通過したエントリーシートチームに対して固定時間を確保するという仕組みを取っています。

スポンサー獲得型の審査

サバラボ1stでは厳密な審査基準を設けていません。なぜなら、まだ具体的なアクションを起こしていないアイディアの良し悪しや実現可能性を判断することは不可能だと考えているからです。

そこで、審査方法には三役員によるスポンサー制度を採用しています。審査員である三役員が「発表されたアイディアをスポンサードして実現に向けて支援したいと思ったかどうか」が審査基準となります。言い換えると、このアイディアに投資してみても良いと思ったかどうかという基準で三役員には審査していただいています。

サバラボ1stの過去実績

エントリーチーム数

エントリーチーム数の推移

サバラボ1stは最低1名〜最大4名から成るチームでエントリーしていただいています。これまでのエントリーチーム数は平均5.5チームであり、弊社は社員数が純増しているので、まだまだ伸び代があります。

エントリーメンバー数

エントリーメンバー数の推移

これまでのエントリーメンバー数は平均12.8名であり、弊社は社員数が純増しているので、こちらもまだまだ伸び代があります。

サバラボ2nd進出数

サバラボ2nd進出数の推移

過去にサバラボ2ndへ進出したチーム数は第三回を除いて最大で1チームであり、こちらもまだまだ伸び代があります。

サバラボ制度を発起した背景

ここでは、そもそもなぜ私が「サバラボ制度」を発起しようと考えたのか、その背景についてお話したいと思います。

①ANGEL Dojo への参加

ANGEL(APN Next Generation Engineer Leaders) Dojo とは、AWSJが主催している実践型のトレーニングプログラムです。

具体的には参加企業から選出された 4〜6 名のメンバーでチームを組み、3 ヶ月間でサービスの企画から実際にプロトタイプ作成をすることで、AWS を活用したチーム開発が体感できる実践型のトレーニングとなっています。

aws.amazon.com

私は2020年に開催されたANGEL Dojo Season2に参加しており、他企業のメンバーと切磋琢磨しながらトレーニングを進める中でエンジニアとして多くの学びを得ることができました。

しかし、このANGEL Dojo は「IT業界歴3年以内」という参加条件があり、弊社エンジニアの多くは参加資格がありません。

単純ですが「これ社内でもやったらええやん!」「どうせやったらエンジニア以外の全社員が参加できるものにしよう!」と考えました。

②新たなキャリアパス

私がサバラボ制度を発足したのはサーバーワークスに入社してからおよそ1年経ってからのことだったのですが、新米ながらに以下のようなことを考えていました。

・AWSを中心としたインフラレイヤーに偏ったスキルセットのエンジニアが多い?(AWS専業なので当たり前といえば当たり前)
・プロダクト開発に興味があるエンジニアは一定数いるが実践する場が少ないのでは?
・ベテランの腕利きエンジニアがさらに新しい挑戦をして技術力を高めたい、自分の力を試したいと思う挑戦の場はどこにある?
・製造部門以外、例えば営業部門であれば商材、営業手法(push型/pull型)、顧客属性(新規/既存)で業務内容は変わるものの「自分たちが本当に良いと思うもの、顧客に必要とされてるプロダクトやサービスをイチから作って、自分でそれを売ってみたい」と思っている人はいるのでは?(前職で自分が営業してた頃はそう思ってた)

このような背景から、技術の自己研鑽に励むエンジニア、日々顧客の声に耳を傾ける営業メンバー等が内に秘めるものをぶつける場があると面白いのでは?と考えました。

③現状への健全な危機感

私がサバラボ制度を発足したのはコロナ禍に入った2020年であり、クラウド × リモートワーク関連株として弊社の株式が市場で注目されていました。客観的に見れば会社経営として順調に見えますが、私の見方は違っていました。

私は「パンデミックによって個人/企業/国家が大きなインパクトを受けたなかで、こうして事業運営ができていること、仕事ができていることは、本当に運が良く恵まれていただけ」だと考えていました。

競合分析など現状調査はいくつか実施しましたが、最終的には「AWS専業という強みを活かしながら、 2024年以降の次の一手として、 他社と差別化する新たな取り組みを行うことで、 サーバーワークスのビジョンに近づくことができる市場環境・社会情勢が整っているのではないか!」と考えたのです。

サバラボ1stの存在意義とミッション

サバラボ1stのパーパス(存在意義)

サバラボ1stは挑戦することの楽しさを体験するために存在している

サバラボ1stは自ら機会を創り出す場を提供するために存在している

サーバーワークスでは「薩摩の教え」のように挑戦する社員を応援/評価する風土があります。

サバラボ1stにおいてもこのような考え方は大切にしており、サバラボ1stでアイデア立案をした社員が「サバラボ1stに挑戦して楽しかった」「楽しかったからこそ、また挑戦したい」と思ってもらえる経験/体験を提供したいと考えています。

【薩摩の教え】評価されるべき人の順序

  1. 何かに挑戦し、成功した者
  2. 何かに挑戦し、失敗した者
  3. 自ら挑戦しなかったが、挑戦した人の手伝いをした者
  4. 何もしなかった者
  5. 何もせず、批判だけしている者
  6. 何もせずに批判するだけではなく、足を引っ張る者

リクルートの旧・社訓に「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という有名なフレーズがありますが、これになぞらえるとサバラボ1stでは「自ら挑戦することを楽しみ、挑戦によって自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよう!」といった考えを持っています。

サバラボ1stのミッション

2024年までにサバラボをサーバーワークスの文化にする

「文化」とは非常に定性的で計測/評価が難しいですが、サバラボ1st運営委員の間では以下の状態を「文化」になった状態と定義しています。

  • 「サバラボ」に関連するキーワードが通常業務内で日常的に使用され、Slackリアクションや雑談などのコミュニケーションが見られる状態
  • 社員が自ら新しいアイデアを求め、ワークショップやもくもく会などの活動に参加している状態
  • サバラボ1stに挑戦しようとしている人を、周りの人が応援してくれる状態
  • 上記の結果として、サバラボ1stへのエントリーチームが常時5チーム以上存在する状態

サバラボ1stの今後の課題

①サバラボ1stエントリーチーム/メンバー数の伸び悩み

以下はサバラボ1stに関する社員向けアンケートの結果ですが、サバラボへの参加を躊躇する理由として「業務逼迫」「アイデア立案のハードルの高さ」の2つが大きな要因となっています。

「業務逼迫」については、月間20時間の固定時間確保の施策をすでに打っていますが、「アイデア立案のハードルの高さ」については依然として改善の余地があります。そもそも「ビジネスアイデアを考える」という経験をしたことがある社員の方が少数派だと考えられるので、そういった方にいかにしてアイデア立案の方法を伝え、考えることを楽しんでもらえる仕組みを作るか、ここが今後の課題だと考えています。

社員向けアンケート

②サバラボ2nd進出数の伸び悩み

過去にサバラボ2ndに進んだチームは3チームありますが、まだ事業化に至ったものはないというのがサバラボ制度の現状です。

もちろん事業を創るということは簡単ではありませんが、打席に立つ回数を増やす(サバラボ2ndに進出するチームを増やす)ことは非常に重要だと考えています。

そのため、サバラボ1stの一次審査を通過したチームに対して、彼らのアイデアをブラッシュアップするためのサポート体制の整備を進めることも課題だと考えています。

まとめ

  • サバラボ制度とは、サーバーワークス社員の皆さんが新しいビジネス(事業/サービス/プロダクト)にチャレンジすることを応援する仕組みです。
  • なかでもサバラボ1stはビジネスアイデアの立案を行うフェーズであり、過去に4回の開催実績があります。
  • サーバーワークスでは挑戦する人を応援/評価する風土があり、「月間20時間の固定時間確保」を設計に組み込むなど様々なサポートを行っています。
  • 直近はサバラボ1stのエントリーチーム/メンバー数の向上(量の担保)とサバラボ2nd進出数(質の向上)の両方で課題があり、絶賛改善活動中です。

山﨑 翔平 (Shohei Yamasaki) 記事一覧はコチラ

2019/12〜2023/2までクラウドインテグレーション部でお客様のAWS導入支援を行っていました。現在はIE(インターナルエデュケーション)課にて採用周りのお手伝いや新卒/中途オンボーディングの業務をしています。2023 Japan AWS Top Engineers/2023 Japan AWS Ambassadors