40代インフラエンジニアが将来について考えた2023年 (re:Invent2023参加報告)

記事タイトルとURLをコピーする

こんにちは、Enterprise Cloud部 技術1課 宮形 です。2023年も終わろうとしております。先日 2023年11月27日~11月30日ににかけてラスベガスで開催された re:Invent2023 に参加してきました。本BLOGでは参加報告として、現地で感じたこと、自身のインフラエンジニアとしての将来について考えたことなどをアウトプットさせていただきます。

写真は re:Invent2023 AWS資格認定者ラウンジでプレゼント頂きましたオリジナルのレゴミニフィグになります。私は無類のレゴ好きでしたので、このようなコラボグッズを頂けてこのうえない喜びでした。

私のキャリアについて

本題を書く前に、自身のキャリアを紹介したいと思います。私は大学を卒業し地元 IT 企業に就職した後、数回の転職はありましたが約20年間サーバーやネットワーク領域に関するエンジニアとして経験を重ね、いわゆる「インフラエンジニア」としてのキャリアを積みました。

  • 最初3年:商用データベースのサポートエンジニア
  • 次3年:メーカー系ディーラーで SMB 顧客向けサーバー・ネットワークの導入インフラエンジニア
  • 次11年:独立系SIerで中小~大手民間企業向けサーバー・ネットワークの導入インフラエンジニア
  • 次2年:現職サーバーワークスで AWS のクラウドエンジニア(インフラ系)

前職の終盤でクラウドを触る機会があり、クラウドの成長スピード・将来性に魅力を感じました。そこから思い立って転職活動し、サーバーワークスと縁あり現職に至っております。re:Invent に参加した時点では41歳でした。

サーバーワークスで出会った人の中にも、多少違えど似たキャリアパスを得てクラウドエンジニアとして活躍されている方が沢山おられました。ですので世間的にも似た境遇の人は一定数おられると思っています。

re:Invent に参加したかった理由

いくつかありますが、主たる理由としては下記があります。

  • インフラとしてみたパブリッククラウドの将来のイメージ像を持ちたかった
  • クラウドを取り巻く環境、ビジネスとしての活用、ニーズに合わせたサードーパーティ等の最新動向を知りたかった

約20年ほどインフラエンジニアをしてきた中で、おおよそ5年スパンで期待されるスキル領域が変化している感覚がありました。これまでは、与えられた仕事に若さと体力で食らいついていけば結果としてその時代にあったスキルが身についていましたが、年齢を重ねることで私生活変化や体力衰えもあり、この先5年後・10年後の歩み方は限られた時間と体力リソースを計画的に使わないといけないなと危機感を感じていました。今目先にある仕事で満足せず、将来を見据えた計画を考えたいと思っていたことも re:Invent に参加したかった理由の一つだと思います。

英語力がほぼゼロであるうえ、長期不在になることでプロジェクトメンバーへ負担が掛かる懸念などで迷いもありましたが、自分の中の何かハードルを壊したい気持ちもあり、勇気を出して参加メンバーに立候補させていただきました。

re:Invent で自分が注視したところ

おかげさまで re:Invent2023に参加させていただけることなりました。re:Invent では数多くのセッションから自分の希望するものを選んで参加するのですが、私は下記のようなカテゴリに注視することにしました。

  • インフラストラクチャの最適化
  • ガバナンス、統制
  • EXPOはインフラストラクチャのカテゴリ中心

まずは AWS CDK を活用した事例紹介や手法に関するセッションに参加しました。CDK は実務では使うことはありませんが、個人的に関心が高かった領域です。CDK を活用すると、プログラマーが普段コードを書く感覚でインフラを定義、構築することができます。高度な抽象化により、深い知識がなくても適切にAWSリソースをデプロイすることができます。AWS のこの記事が個人的には分かりやすいかなと思います。

【AWS グラレコ解説】使い慣れたプログラミング言語でクラウド環境を構築 ! AWS CDK をグラレコで解説 - builders.flash☆ - 変化を求めるデベロッパーを応援するウェブマガジン | AWS

次に CloudFormation Guard、cdk-nag の利用推進を行った事例紹介のセッションに参加しました。CloudFormation Guard、cdk-nag とは、IaC や CDK でデプロイ前やデプロイ時などに、自動的にセキュリティやコンプライアンスに準拠しているかをチェックしてくれるツールです。 上手く活用すれば、これまで専門のベテランエンジニアがレビューをしていた領域の負担・工数を軽減することができます。ご興味のある方はAWSの下記記事をご覧ください。

AWS Cloud Development Kit と cdk-nag でアプリケーションのセキュリティとコンプライアンスを管理する | Amazon Web Services ブログ

これらセッションや事例を聞いての個人的感想ですが、近い将来ではこれまで以上にインフラに精通した人ではなくとも AWS が構築できるようになり、その領域に関するスキルセットやリソースは省力化する考え方が一般的になるのだろうと感じました。

続けて EXPO の会場を見学しました。写真は EXPO 会場の snowflake ブースでやっていたスキーゲームのレクリエーションです。ビジネス目的のイベントですが遊びを取り入れているところが日本では考えられない感覚だったので「自由だな(笑)」と驚きました。

EXPO 会場では各企業が自社サービスや取り組みの紹介としててブースを出展しており、カテゴリ別にゾーンで区切られているのですが、私が実務に直結する領域ということでインラフストラクチャゾーンを中心に見て回りました。いかんせん英語力が無いのでブースの方に話しかけられてもQAができず、カタログをもらったりデモを眺めるだけになってしまいましたが、私なりに感じたことは「これからAWSを使います」という顧客向けは殆どなく「すでにAWSをゴリゴリ活用しています」という顧客向けのものが中心だということです。(当然かもしれませんが💦)

どのブースにも共通して「最適化(Optimization)」というキーワードが登場しているように思えました。クラウドのIaaS領域は、世界レベルではコモディティ化の時期に入っているのだと感じました。

re:Inventの後半では、ワークショップや Jam、GameDay といった実技演習中心のセッションで時間を過ごしました。あれよあれよと時間は過ぎ去り、気が付くと re:Invent を締めくくる最終夜 re:Play の時になってしまいました。この re:Play ではメインステージで DJ がクラブミュージックを披露してくれました。私はこの手の音楽フェスは初参加でしたが今まで感じることのない刺激に埋め尽くされ、気が付くと世界中の人々と一緒にノリノリで「Yeaaaaah!!」とやっていました。(笑)

re:Invent に参加して感じたインフラエンジニアの将来

2023年の re:Invent の一番の目玉は新サービス「Amazon Q」だと思われた方が多いのではないでしょうか。私もそう感じました。Keynote で Amazon Q が発表された直後にAWSマネジメントコンソールを除くと「Amazon Q」のチャットが表示されていて利用可能になっていました。クラウドのスピードを感じることができ、とても印象的でした。

この Amazon Q はチャットボットとして AWS の使い方や質問などを投げることができます。これは re:Invent 参加中に感じた「インフラを精通した人ではなくても AWS が構築できるようになる」「専門家(インフラエンジニア)の負担・工数を軽減する」の一環だと感じました。

私のようなインフラエンジニアがこれまで培ってきたサーバーやネットワークの専門知識は、徐々ではありますが求められる機会は減っていくのだと思います。私の社会人としてのファーストキャリアは 商用データベースのサポートエンジニアでしたが、このような専門家が在籍するサポートセンターやチケットシステムに一問一答で問い合わせする機会も徐々に減っていく可能性があります。

例えば私のキャリアだと、サーバーワークスに Join する前は物理サーバーのキッティング、セットアップ、ラックへの取り付け、ファームウェアの更新などのスキルを持っていましたし、そのための学習や業務のためにリソースを割いてきました。サーバーワークスではこれらは一切不要になったわけですので、それは勿体ないとも感じました。しかし、その空いたリソースで新しい領域へのチャレンジができているという現状もあります。AWS を始めとるするテクノロジーの進化に合わせて、ニーズが減少する領域は整理し、新しい領域へシフトしていく姿勢が必要だと感じました。

今回の re:Invent に参加した経験を踏まえ、私なりに想像する将来インフラエンジニアが期待される領域はこのような感じではないかと考えました。

  • クラウドを内製構築する事業会社向けのレビュワー、コンサルタント
  • セキュリティ、コンプライアンス レビューの運用設計、アセスメント
  • AI を活用したインフラの運用、コスト最適化の仕組み実装

もともと IT におけるインフラは「非競争領域」とされていました。本来やりたいことはアプリケーションやビジネスロジックの実装であり、インフラ領域はその土台として必要のために仕方なく実装してきたわけであり、そこを充実したところで利益構造を生み出せるものではありません。「動いてあたりまえ」という非機能要件の大半を AWS 等クラウドが担保できるようになった昨今では、インフラが機会損失となるリスクも低くなっています。インフラエンジニアには「安定稼働させる技術」のニーズが減り、今後はセキュリティ、コスト削減、最適化・効率化といったのニーズがより高くなると想像しました。

まとめ

re:Invent 会場のラスベガスから帰路につく飛行機で撮影した、ラスベガスの朝焼け写真です。とても美しく「応援しているぞ、またラスベガスにおいでよ」と激励してもらえた気持ちになりました。

インフラエンジニアの将来について私なりに思う所を書かせていただきました。個人的見解になりますので、このような将来になるかは全くわかりません。ただ、少なくともクラウドのインフラ領域 (IaaS)はすでにコモディティ化が始まっており、「インフラだけ詳しいエンジニア」ではこの先「食える技術」では無いという危機感を強く感じた 2023 年でした。

本ブログの内容が、ご覧になった皆様のキャリアを考えるうえで参考になれば幸いです。

宮形純平(執筆記事の一覧)

エンタープライズクラウド部 ソリューションアーキテクト1課

好きなお酒は缶チューハイと本格焼酎。