こんにちは!サーバーワークス 採用育成部 菊池です。
IT業界に興味を持ち、業界研究を進めている方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、「IT業界」と一口に言ってもその領域は非常に広く、全体像をつかむのは意外と難しいと思います。
そこで今回は、IT業界の代表的な分類をはじめ、「そもそもITシステムとは?」「クラウドって何?」といった基本的なポイントを、初学者にもわかりやすく整理して解説します。
IT業界への理解を深めたい方や、自分に合った分野を見つけたい方のヒントになれば幸いです。
IT業界は大きく5つに分けられる
実はIT業界は非常に多様な領域で構成されており、それぞれの分野が独自の役割を担っています。
一般的には、以下の5つのカテゴリに分類することで、その全体像を把握しやすくなります。
ハードウェア業界
ハードウェア業界は、一言でいうと「ITのガワ(モノ)を作る業界」です。
パソコンやタブレット端末に始まり家電やゲームなどのデバイスの開発・販売を主とする業界です。
特徴としては、扱う商品の幅広さがあり、企業によって扱う商品・強みが特に異なっている業種です。
近年のAI、デジタル革新によって多くの「モノ」がネットに繋げられています。いわゆる、IoT (Internet of Things) という概念の基に、ネットに繋げられる「モノ」を作る業界がハードウェア業界です。
ソフトウェア業界
ソフトウェア業界は、一言でいうと「ITの中身を作る業界」です。
スマートフォンで利用できるアプリや、パソコンで利用できるソフトを作っています。
個人向けのスマホアプリやPCゲームなどを提供する企業と、法人向けにウイルス対策ソフトや出退勤システムなどのソフトウェア開発をする企業に大きく分かれているのが特徴です。
インターネット・web業界
インターネット・Web業界は、一言でいうと「ITを利用してサービスを提供する業界」です。
誰もが利用しているSNSや検索サイト、Web広告、インターネットショッピングなどのインターネットサービスを製作し、発信することが主な事業内容となります。
個人向けではWebサイト・アプリケーション・SNSの制作や運営などに取り組んでいることが挙げられます。
通信インフラ業界
通信インフラ業界は、一言でいうと「モノをITでつなぐ業界」です。
電話・インターネット・光ファイバー・無線などの通信インフラを扱います。
具体的には、スマホのモバイル通信やWifiを利用できる環境を構築するなど、皆さんがインターネットを利用できる環境を提供することが主な事業内容になります。
情報処理サービス(SI)業界
情報処理サービス(SI)業界は、一言でいうと「ITで企業を支える」業界です。
ITの力を用いて顧客の業務上の問題を解決する役割を担う仕事で、主にSIer(システムインテグレーター)やITコンサルタントと呼ばれる職種が挙げられます。
SIerはソフトウェアの「設計・運用・保守・管理」を一括して請け負います。
ITコンサルタントはITを用いてクライアントの課題解決を支援することが主な業務内容になります。
ここまでで取り上げた4種類のIT業界と連携して、顧客企業の仕組みを作り上げて支援をする業界が情報処理サービス(SI)業界になります。
そもそも「ITシステム」って?
では次に、ITシステムって、そもそもどう成り立ってるの?という疑問について説明していきます。
ユーザーが何かを操作し、それに応じて処理が行われ、結果が返ってくる仕組みです。
たとえば、Amazonで買い物をする場合
2.カートに入れて購入(データ処理)
3.届け先や支払いを設定(保存・通信)
4.購入完了!(データベースに反映)
このように、みなさんが日頃使っているWebサイトやアプリは、裏ではさまざまな技術で支えられています。
この一連の動きを支えているのが、ソフトウェアとインフラです。
領域 | 役割 |
---|---|
ソフトウェア(アプリケーション領域) | 実際にユーザーが触れて使う「機能」や「画面」部分、データ処理の仕組みもここに含まれる |
インフラ領域 | システムが安定して動くための「土台」や「環境」、ネットワークやサーバーなど、目には見えない部分を支える |
「家づくり」に例えて言うと、
アプリケーションは家具・間取り・スイッチ類
→ 実際に人が住んで使う部分。デザインや使いやすさが大事!
インフラは土地・柱・配管・電気設備
→ 家そのものの構造や、生活に必要なライフライン。表からは見えないけど、これがなければ家は建たない!
そして、それぞれの連携がとても重要です。
インフラが不安定だとアプリがエラーになったり、動かなくなったりします。
アプリの設計が悪いと使いづらくて、ユーザーがすぐ離れてしまいます。
なので、アプリ(使いやすさ)とインフラ(安定稼働)の両方をしっかり作ることが、良いシステムづくりのカギとなります。
ITの力で課題解決?
そして、ITシステムの導入には大きく分けて2つのアプローチ方法があります。
完成されたサービスを利用する場合とシステムインテグレーションを利用する場合です。
どちらも「ITの力で社会やビジネスの課題を解決する」という目的は同じですが、アプローチの仕方や働き方は大きく異なります。
では、この2つのアプローチ方法の違いを、経理業務に関する課題を例に比較してみます。
完成されたサービスを利用する場合
解決方法:クラウド型の経理サービスを導入し、定型業務を自動化
特徴:すぐに使い始められ、導入コストも抑えられる
対象:同じような課題を持つ多数の企業に対応
このように、完成されたサービスを提供する企業は、自社で開発したサービスを多くのユーザーに届けることを目的としています。
すでに完成されたシステムを提供するため、ユーザーはすぐにサービスを利用できます。
導入までのスピードが速く、コストを抑えられるというメリットがありますが、カスタマイズできる機能や使い方にはある程度の制限があり、自社の業務をシステムに合わせる必要があるケースもあります。
開発側としては、「どうすればもっと使いやすくなるか」「機能をどう進化させるか」といったサービス改善や継続的な開発に力を入れることが求められます。
システムインテグレーションを利用する場合
解決方法:業務をヒアリングし、個別にシステムを構築
特徴:フルカスタマイズが可能で、他システムとの連携や高度な要件にも柔軟に対応
対象:既存ソフトウェアでは対応できない個別性・複雑性の高い業務を抱える企業
システムインテグレーション(SI)を行う企業では、クライアントごとに異なる課題や要望に対して、最適なシステムを一から設計・構築していきます。
つまり、オーダーメイドでITシステムを提供する形です。
費用や導入までの時間はかかるものの、自社のニーズに完全に合った、きめ細かくカスタマイズされたシステムを実現できます。
そのため、要件定義や提案、設計、開発、運用保守まで幅広い工程に関わる機会が多く、課題解決型のコンサルティング的なスキルが重視されます。
すぐに利用でき、多くの企業にとって使いやすい完成されたサービスは、比較的シンプルな課題解決に適しています。
対照的に、システムインテグレーションは、一社ごとの特殊な課題や複雑な要件に対し、ゼロベースから最適なシステムを設計・提案できるため、独自性の高い課題に力を発揮します。
どちらもITを活用て社会や企業の課題を解決するという点では共通していますが、それぞれ異なる価値や強みを持っています。課題の性質に応じてどちらの手段を選ぶかが重要になるので、同時に、自身の働き方や目指す将来像に合わせてどちらのタイプが合っているかを理解することも大切です。
「クラウド」とは
前述のとおり、ITシステムの動きを支えているのが、ソフトウェアとインフラです。
そして、現在ITインフラの主役となってきているのがクラウドという技術です。
クラウドとは、物理的なIT環境所有するのではなく、インターネットを使ってIT環境を利用するという概念です。
(詳しくはこちらの動画をご覧ください)
クラウドサービスには大きく分けて3つの種類があります。
それが IaaS(イアース)、PaaS(パース)、SaaS(サース) です。
PaaS(Platform as a Service):アプリケーション開発や実行に必要な基盤を提供
SaaS(Software as a Service):完成されたソフトウェアをサービスとして提供
これらのサービスは、それぞれ異なるレベルで提供され、どれを選ぶかは企業の課題やニーズに応じて決まります。
なかなか理解が難しいと思うので、「家」に例えてわかりやすく説明していきます。
IaaS=家づくりの設計から一緒に関われる注文住宅
IaaSは、「どんな家を建てたいのか」という設計の段階から一緒に考えてくれて、土地と骨組みまで用意してもらえる」というイメージです。たとえば、「何人家族で、どんな暮らしをしたいか」などの基本的なコンセプトづくり(設計)から関わることができて、その内容に合わせて家の土台となる部分を整えてもらえます。
どんな家にするか = どんなシステムを作って課題を解決するか
提供されるもの
土地と骨組み = ネットワークやサーバー、OSなどのインフラ基盤
自分でやること
壁や内装、家具を作って住める状態にする = アプリやミドルウェアの設定・インストールなど
PaaS=ある程度整った建売住宅
PaaSは、「すでに家の設計や骨組み・内装まではできていて、あとは好みに合わせて家具を置くだけ」のようなイメージです。アプリ開発に必要な環境がすでにそろっているので、開発者は中身(アプリそのもの)に集中できます。
どんな家具を置くか、どんな暮らしをしたいか = どんなアプリを作るか
提供されるもの
土地・骨組み・内装まで済んだ建売住宅 = アプリ開発のための実行環境
自分でやること
家具を置いたり、自分好みに手を加える = アプリの作成や設定など
SaaS=家具・家電付きの賃貸住宅
SaaSは、「家具も家電も最初から全部そろっていて、すぐに住める状態」のようなイメージです。アプリが最初から完成しているので、すぐに利用を開始できます。
希望条件に合った物件を探す= 完成されたものの中から選ぶのでシステム構成などは考えなくてよい
提供されるもの
住むだけの家具付き物件 = 希望に合ったアプリケーション
自分でやること
スーツケースひとつで引っ越してすぐ使う = ログインしてすぐ使える
このように、クラウドサービスには「IaaS」「PaaS」「SaaS」といった提供範囲の異なる種類があり、用途や目的に応じて選ぶことが重要です。
そして、近年ではこれらのクラウドサービスを複数組み合わせて活用する「マルチクラウド」という考え方も注目されています。
たとえば、「IaaSでインフラを柔軟に構築しながら、一部の業務ではSaaSを使って効率化を図る」といったように、用途に応じて最適なクラウドを選ぶ柔軟な設計が、より強いシステム構築を可能にしています。
まとめ:サーバーワークスは「情報処理サービス業界(SI)」に属する
サーバーワークスは、SI(システムインテグレーター)に分類される企業です。
中でも、AWS(アマゾン ウェブ サービス)を活用して、企業の本質的な課題解決のクラウドの導入・運用を支援するクラウドインテグレーター(CI)という分類になります。
クラウドという新しい時代のインフラを駆使してに挑むクラウドインテグレーターです。
SaaSのように完成されたサービスで広く課題を解決する企業とは異なり、顧客ごとに最適な提案・構築が求められます。
だからこそ、技術力や課題発見・提案力が問われるやりがいのあるフィールドとも言えるでしょう。
「IT業界で働きたいけど、どこが自分に合っているのかわからない」という方は、自分がどんなスタイルで課題を解決したいか、どんな影響を与えたいかを考えてみると、進みたい方向が見えてくるかもしれません。
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